再開発研究/(社)再開発コーディネーター協会

「分譲型団地建替事業における街づくりの視点」
〜国領住宅建替事業における住民の街づくり思想を反映した地区整備計画の策定〜

 


はじめに
  1. 建替事業の経緯
  2. 街づくりの視点に基づく建替計画案の策定
  3. 国領建替事業おハードルと実現に向けた戦略
  4. 住民参加による建替(再生)計画とその共有化
  5. 住民参加による地区整備計画の策定
  6. 建替計画の要件とされた基準法86条「一団地認定」
おわりに


はじめに
  国領住宅は、京王線国領駅(新宿より23分・15km圏内)より徒歩6分。野川沿いに佇む、昭和39ね旧日本住宅公団(以下、「旧公団」という。)によって分譲された団地である。(7棟144戸、敷地13,213u)
  この団地には、約40年掛けて育った樹木や野川、団地内を通過する小学生の通学路、桜並木・・・等、豊かな自然が住まい手の営みの中で培われた”風景”があった。しかし、躯体や設備の老朽化が進み、住戸形態も43u・48uの狭小住宅2タイプしかなく、その形状も画一的な平行配置型住宅であるが為、建物ばかりでなく“街”自体も老朽化し、人工の流出が続き、インナーシティ化していた状態であった。
  国領住宅の様に、高度成長期、団地型ニュータウンの建設を都市計画事業として位置付け、持ち家政策と併せて、旧公団・公社等が都市計画法11条「一団地の住宅施設」として供給した分譲型団地(昭和24〜昭和38年)は東京都だけで43ヶ所(28,700戸)存在した。これまで、旧公団・公社の賃貸型団地としての「一団地住宅施設」の建替えについては、都市再生機構等による主導で行われた事例はあるが、分譲型住宅において民間主導による建替事業は今回の「国領住宅」が初めてである。
  以下においては、建替事業のパートナーに選定されてから着工まで6年間、困難を極めた分譲型団地の建替事業の経緯と着工に至った要因を通じて、建替事業における合意形成上に不可欠な還元面積の確保と、建替えの推進力となった「街づくりの視点」との関係を明らかにする。

 


1.建替事業の経緯


 国領住宅の建替計画は、昭和60年頃から旧公団をパートナーとして始まったが、当時住戸専有面積が2タイプであったが土地共有持分割合が同じであった為、この調整に難航しながらも、都市計画の変更協議を経ながら基本設計を完成させた。(平成8年)
  しかし、旧公団が分譲事業から撤退することとなり、これに伴い民間デベロッパーをパートナーとして募ったが、バブルの崩壊によるマンション市場の下落等により、デベロッパーが参画しては撤退してしまう状態であった。区分所有者(以下、「住民」という。)としては「最後のパートナー」という想いから、平成12年にデベロッパー9社の中から2社に絞り、この2社が建替事業計画を提案。そして、住民による投票の結果、現在の建替パートナーが選定され、現在の建替計画の原型となる計画案が策定されたのである。


 



2.街づくりの視点に基づく建替計画案の策定

  これまでの建替計画案は、容積率200%を消化した板状高層型であった。実際、住民としても老朽化した狭い住宅が「広くて新しい住宅」に生まれ変わることに第一義があり、「地域の文脈」や「街並み」との関係性は第二義的要素であった。マンションという概念が、機能性の追求を主眼とし、地域性や文脈とは無関係に建築基準法(以下、「基準法」という。)の範囲内で高度利用されているのが一般的である為、街づくりの視点が第二義的要素となっていることも理解される。この為、建替事業計画の提案(2社)においても、他社は、板状高度利用型の計画案であり、結果として今回の街づくりの視点に基づく計画案が選ばれたが、住民への還元面積は両案とも同程度であったこともあり、その差は僅差であった。



 

 




板状高度利用型に賛成した住民の声としては、形状がシンプルでわかりやすいこと、セキュリティの容易性や日照条件の優位性、板状高層棟によりまとまった空地(緑地)が確保できる等である。これに対し、街づくりの視点に基づいた今回の案は、具他的には、“わが街づくり”をKeywordとして、既存樹木を活かした街並景観、野川との関係性を高める緑道計画、表情豊かな外観、街路沿いのスカイラインを抑える低層棟の配置、大きなコモンと小さなコモンを繋ぐ散策路等の計画を行ない、「街づくりとして再生」を試みたのである。





 


  この案に賛同した声としては、武蔵野台地と多摩川の中間に位置する国領の地域性を意識している計画、既存樹木を活かした計画、雁行によって窓が多く風通しがよい等であった。


3.国領建替事業のハードルと現実に向けた戦略

国領住宅の建替事業は、1棟のマンション建替えと異なり、次の点で質的に高いハードルがあった。

3−1 建替事業成立要件
a. 容積率200%の確保

  建替事業が実現できるか否かの最大の鍵は「合意形成」であるが、合意形成は言い換えると「建替えのメリット」であり、このメリットは現状の住戸と還元住戸とのギャップがあればある程得やすい。ギャップの内容の最大要素は、住戸面積の大きさ(狭→広)である。この為、専有面積がUPすればする程、還元面積がUPし、建替えメリットが明確になることから、容積率を周辺並みに200%確保することが最大の事業成立要件にであった。


b.都市計画法11条「一団地の住宅施設」の廃止
 しかし、国領住宅の課題は、都市計画法11条「一団地の住宅施設」の都市計画決定に基づき建設された為、第一種中高住居専用地域(基準容積率200%)でありながら、この都市計画決定(建ぺい率20%・容積率70%)を変更(廃止)しない限り、同規模の建物しか建てられないことであった。


c.地区整備計画への移行
「一団地の住宅施設」の都市計画の変更は、国土交通省・東京都より、「良好な居住環境を確保した上で地区整備計画への移行を以って廃止する」方針が出されたものの、分譲型住宅の実例が無いことも相俟って、「良好な居住環境の確保」の内容をめぐって、その実務は困難を極めた。「国領住宅を第一種中高層住居専用地域の容積率200%の範囲内で基準法に基づき建替えたい」というシンプルな要求が、都市計画の変更(廃止)となると「一民間の建替えの為に都市計画を変更しても良いものか」という議論になり、「仮に変更するとしても、その内容は「良好な
居住環境を確保する」為には、所管行政が主導的な役割を担う・‥」となり、協議に時間を要したのであった。



d.基準法86条の「一団地認定」
 又、仮にこの都市計画が変更(廃止)され、容積率200%になったとしても、街づくりの視点に基づいた今回の計画案は、高層棟4棟・低層棟3棟拾計7棟)の複合型であり、S字街路や細街路により建物や広場を繋げている計画であった。基準法では「一敷地一建物」が原則であり、この例外として基準法86条の「一団地認定」があるが、これは元々住宅団地やニュータウン建設の為に作られた条文であり、今回の様な計画を想定していたものではなかった為、この基準法86条の「認定」が受けられるのかという別のハードルもあった。


3−2 建替事業を実現する為の戦略
 建替事業を実現する為の暁略として、
 @街づくりの視点からの建替計画を、「住民全体が共有化」し、
 A住民による街づくり再生(建替)計画とし、住民の意思として主導的に行政に働きかけ、「一団地の住宅施設」を廃止、200%の容積を持った地区整備計画に移行させる。
 B基準法86条の認定については、上位概念である地区整備計画の目途を付けてから、やはり住民代表と共に行政と協議する方針を採った。


4.住民参加による建替(再生)計画とその共有化
 住民全体に街づくりの視点の建替計画を共有化する為、住民全体(134名)に対して計画案の全体説明会〔計3回)、更にアンケートによる意見・要望の組み入れ、個別ヒアリング、住民代表による計画検討会を繰り返し行った。(平成12年秋、平成13年秋)
 この過程における建啓計画の具体的な改正点は、@街づくりの視点を深める為に、@人草分社の実現(自走式地下駐車場による計画地全体の人事分離)@人主体の街路計画@コモン計画の充実・拡大(大きなコモン、小さなコモン、路地空間)@壁面後退による既存樹木を活か
した緑道計画、更にAバリアフリーの観点から◎低層棟へのエレベーターの設置。又、B住戸計画は、アンケートに基づき再構成し、世帯や個性ミックス型街づくりという観点から、60u〜100u超までの住戸面積の中で約60タイプ(最終的には810タイプ)を用意し、各々のライフスタイルに対応出来るものとし、叉低層棟住戸希望が多かった為、低層棟の戸数(67戸→80戸)と間取りタイプを増加し、住民の希望が可能な限り叶うものとした。
これらの内、建築費の観点から修正された点(自走式地下駐車場→機械式地下駐車場)や、分譲マーケットの視点から住戸構成を変更した点以外は、この時の住民参加により創り上げた計画案(図11参照)が概ね実現している。


 







  後に地区整備計画が軌道に乗り出した頃(平成15年上逆に建築費(見積頃が当初の予算(約54億円が約68億円と大幅に,上回り、これに見合う分譲価格のUPも市況低迷から期待出来ないことから、当初予定していた還元面積(約75u)を約15%〜約20%減少せざるを得ない状況が生じたのである。還元面積は、合意形成上の最大の要素である為、これを下回ることはこれまで築いて来た建替推進同意を白紙に戻すことになりかねず、理事会レベルの抵抗も強く住民総会に図れる状態ではなかった。この為、建築コストを抑える為に高層棟の構造をSRC造からRC造に変更し、合理化を図った。又、レンタブル比(専有面積比)を高める為、共用施設を地下化し住戸専有面積をUPさせた。
ただし、これにも限界があり(約5億円程度の減額にはなった)、更に建築コストを下げる為には、配棟計画から見直す必要があった。そこでコストの掛かる雁行型低層棟を取り止め、中層棟と高層棟に絞った計画案を試みた。(図12参照)

しかし、これまでの街路沿いの低層棟(図13参照)と街並みとの関係、又路地空間や小さなパティオといった街づくりの視点が薄れ、住民を納得させるものではなかった。そこで、理事会レベルと協議の上、建築コストの予算を約63億円に設定し、これに基づいた還元面積(約66u)を、こ
れまでの経緯等も含めて住民臨時総会に提示し、建替え決議に向けて進める承諾を得たのである。





僅差で選定された計画案が、住民参加の下、自らの計画案となり、合意形成の最大要素である住戸画積(還元面積)を多少犠牲にしてまで、自分達の街づくりの視点(第二義的要素)を大切にしようとする力を持つに至ったのである。









5.住民参加による地区整備計画の策定

 平成12年秋より、都市計画の変更(廃止)の協議を行政と進めるが、1年以上経過しても進展がなく、又住民参加二よる街づくり再生(建替)計画が固まってきたことから、住民による「建啓に向けた地区計画の促進等に関する要望書」を市長宛に提出した。(平成14年3月)
住民134名中127名(約95%)の署名・捺印の他、各住民が老朽化した住宅における田常的な支障(赤水、階段の上り下り、狭さ、昔、etc)を切々と述べ、早期地区整備計画への移行を訴えたのである。この住民全体の要望書を受けて、地区(整備)計画の実質的な協議が始まった。(平成14年8月)。しかし、地区整備計画の範囲やその内容については、実務的に難航した。



5−1 地区整備計画の範囲
 地区整備計画の範囲について、住民からはスケジュールを早める上でも国領住宅の範囲(約1.3ha)で求めたが、地区整備計画の範囲として狭く、又その街区性も弱いことから、隣接の都営住宅及び都市再生機構の職員住宅も含めて行なうことになった。
更に行政は、国領駅周辺地区r約36.7ha:図14参照)で地区計画を制定し、その一部として今回の範囲に地区整備計画を策定して「一団地の住宅施設」を廃止する方針を採った。




 
5−2 「容積率」『高さ」「公園」
 地区整備計画の内容について、行政サイドは、今回の建替(再生)計画から切り離した形で、地区計画を進めたい意向があった。行政側の地区整備計画の考えは、「良好な環境を確保する」為には公園を広く取り「容積率」や「高さ」を岡辺より抑えることが必要というニュータウン的既成概念があった様である。この為、特に@容積率やB高さB公園の考え方に対して、住民サイドとは大きな隔たりがあった。
行政サイドから提示された地区整備計画素案(第1次(平成15年2月〕)は、@容積率は、周辺基準容積200%よりも50%下げた「150%」に、A高さは、基準法上の高さ規削(日影規制や斜線制限)とは別に「30m以下(10階程度、B公園は「敷地面積の13%(約1,700muといった極めて厳しい内容であった。この第1次素案に対し、住民サイドとしては、この内容の地区整備計画は「何の為の地区整備計画か」という根本的な問題に立ち返ってしまい、叉「良好な居住環境を確保」するには容積率や高さを周辺よりも抑えなければ担保出来ないものなのか、仮にこの内容であれば、今までの建替えの合意形成は白紙となることは明らかであった。
 そこで、この難局を打開する為、「良好な層住環境を確保」ることは、街づくりの視点からも大切であるという土俵は共通としながらも、その確保の手段は、「容積率」や単純な形態の「高さ」、「公園の面積」ではなく、「街並みの中の風景」としてどう見えるか、どう人の心に映るかという視点から検討してもらいたい旨を訴え続けた。
容積率のあり方を土地に対してマッス(塊)としての数値で見るのではなく、7棟に分散し且つ高層棟と低層棟に分けることにより、マッスが小さく細くなること。又高さについても、建築形態としての幅等により、高さの圧迫が緩和されることや、街路沿いに低層棟、奥に高層棟の配棟とすることにより、街並みの風景としても違和感が生じないこと等をパースやスタディ模型を使いながら、行政との協議が繰り返し行われた。


 


 この協議を受けて行政から第2次地区整備計画素案が提示された(平成15年7月上その内容は、容積は周辺並みに200%、高さについても基準法以外の規制は掛けない内容であった。しかし、公園は「第1次案の時より増えて、敷地面積の約17%(2,200u)を2方向の道路に画している南西側角地」という内容のものであった。これに対し、住民サイドとしては、通常の開発指導要綱では敷地面積に対して6%の公園設置なのに「良好な環境を担保」が何故に3倍もの公周面積に繋がるのか。公園のあり方についても、ニュータウン建設型の公園面積と形状ではなく、既に形成された市街地と育まれた樹々をどう活かし、この地域にとってどういう公園が必要なのか
という観点から、小学校の校門前に設けたり、野川との接近性を高める為のものを提案した。


5−3 壁面後退
 行政側からの地区整備計画上の要請としての敷地固園の壁面後退は、元々計画案で予定していた為支障はなかったが、西側都営住宅との間にある「区画道路1号」については、時間を掛けて協議する必要があった。行政サイドは、この区画道路を10mの幅員としたく、そしてこの通路負担として、都営住宅と国領住宅が各々折半(5m)という方針(第1次・第2次素案)を出した。しかし、幅員10mにすると、ここにある既存樹木を保存することが出来なくなること。又そもそも10mの幅員が必要なのれ10mとなれば通過交通が増え、かえって環境を損ねることにならない‥・。道路幅員としては、現状都営住宅側にある通路(幅員6m)を活用し、国領住宅側はこれに見合う5mの壁面後退を行い、既存樹木の保存を含めた練達として創り上げ、周辺住民も利用出来る散策路として野川への接近を高めた方が、街づくりへの貢献となるのではないかという観点から、行政と協議を重ね5mの緑道を地区整備計画に位置付けたのである。











5−4 行政と街づくりの視点の共有化プロセス
 建替えの合意形成の為には、確かに容積が周辺並みに確保され、これを消化する為には、一定の高さも必要である。しかし、それだけではなく、街づくりという視点の中で何が出来るか、何をすべきかの観点から、行政とも街づくりの将来像を共有化したプロセスでもあった。
 行政との協議は、住民代表数名とパートナーが入って行い、この過程は理事会や建替えニュース、住民全体の説明会や個別面談等を通じて、情報開示された。住民からの街づくりに対する壁画後退、枝道、公園のあり方については概ね理解を得られたが、公園の権限移譲(土地
提供)については反対の声が大きく、40年間自分達が自分達の手で守ってきた経験から、これからも自分達で守れるという強い信念の下、自主管理公園となり(但し、容積からは除外上行政サイドもこれを承諾したのである。 この様な住民代表と行政との平成15年の約1年間に亘る月1回程の協議は、地境住民の意見(意向)と地域の特性を反映する地区整備計画の協議の本来の姿であった。この協議結果を踏まえた地区整備計画案が策定され、国領駅周辺地区の街づくり懇言来会(平成16年・最終上都市計画法16条、ユ7条に規定される説明会や告示・縦覧を経て、都市計画審議会(平成16年10月)により、都市計画決定されたのである。




6.建替計画の要件とされた基準法86粂「一間地認定」
 地区整備計画により、容積率(200%)のハードルを超えたものの、次に基準法、特に基準法86条の「一団地認定」のハードルがあった。
具体的な大きな課題となったのは、以下の事項である。
 @基準法86条認定と接道長(敷地外闇の1/4が幅員6m以上の道路に接道)
 A基準法86条認定と日影規制(建物相互間の日影。建築物が複数ある場合、複合日影として日影条例を適用)
 B基準法86条認定と全員同意
 住宅団地やニュータウン建設の為に設けられた基準法86条も、時代の変遷と伴に街づくりに関しての「総合的設計制度」と位置付けられ、東京都の認定基準も総合的な観点が認められる様になってきているが、これも実務的には「何が街づくりか」「何が総合的観点か」は非常に曖昧で不明確であった。
そこで、「一団地の住宅施設」を街づくりの視点から「地区整備計画」への移行の目途を付けた後に、基準法86条の各解釈論も上位概念である地区整備計画に沿う形で展開すべきとの観点から、行政と協議を行った。この観点から、各課題について(個別の課題については技術的な点が多い為、ここでは割愛する)柔軟な解釈が展開され、基準法86条の認定の目途に辿り着いたのである。(平成16年2月、平成17年4月)
特に建物相互間の日影規制については、原則的には個々の建物の設定敷地を設定し、この設定敷地を基準に日影規制をチェックするが、今回の様に建物7棟が路地空間で分かれていたり、雁行した低層棟と高層棟に分かれている場合は、平行配置の様に単純な離隔チェックは困難であった。そこで認定基準にある「居住環境上支障がない場合」か否かを、320戸個別の開口部に及ぼす具体的な日影・日照をチェックし、「居住性に支障がないこと」の認定を受けたのである。又、基準法86条1項の認定を受ける為には、法文上全員同意が必要であり、ニュータウンの建設を目的とする場合、当初土地所有者は1社(1名)である為何等問題はないが、建替えにおいて基準法86条1項を活用する場合、全員同意は非賛成者がいると認定を受けられなくなる。
国領住宅の場合も数名の非賛成者がいた為、所有者全員の同意書(印鑑証明添付)が取得出来なかった。そこで、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」という。)の一括建替え決議に基づき非賛成者に対し催告(区分所有法70条4項)を行い、建替えに参加する旨の
回答が無い場合は売渡し請求権(区分所有法70条4項)を行使した。民法上この売渡し請求権は語学上「形成権」として位置付けられている為、この請求の到達により法的に売渡し(売買)の効果が発生し、実体上の権利は移転する。これにより登記簿上の名義とは異なる区分所有
法上の売渡し請求権行使者の同意書を以って、全員同意の要件を形成権によって解決したのである。













おわりに

 平成12年10月に事業コンペによって参画してから、地区整備計画や基準法86条協議を経て一括建替え決議が成立したのは、平成17年7月である。一括建替え決議後においても、特に非賛成者に対して、催告や売渡し請求、抵当権者の説得、更には裁判や明渡しの仮処分等、次々
に湧いてくる課題を解決し、平成18年3月に何とか着工にこぎ着けたのである。(平成20年春竣工予定)
 着工に至った最大の鍵は合意形成であるが、住民が6年間碓やすことなく持ち続けた「建替えるという合意形成」は、還元面積といった経済条件だけでなかったところに大きな特徴がある。
最近の建替計画は、往々にして経済性・効率性偏重型が多いが、特に団地型の大規模な建替えは、街との関係性を掘り下げる時期にきている。
建物が更新されても、街自体が「ちぐはぐ」であれば、いずれ街の力(活力)は衰え、街・建物から人が流出してしまうからである。
国領住宅の建替えが、全て理想型の建替を実現したとは言えないが、あるべき街の姿(容積・高さ・公園・街路)や建替えを検討し、これを住民全体が共有化したことは事実であり、これにより住民の「建替えるという合意形成」が強固となり、高いハードルを超える原動力となったのも事実である。
 叉、今回の建替えにおいて地区整備計画を行ったが、行政と公園のあり方や建物の高さと街並景観等について協議を重ね、「街づくりの視点」からの計画案を行政自身も理解し共有してもらったことも、特筆すべきことと思われる。往々にして地区整備計画がその民主的制度という下に説明会等によって、高さや壁面後退を中心に組み入れ策定されているのに対し、今回の地区整備計画は、あるべきプロセスを経て、これを反映した本来の地区整備計画ともいえる。
 今回の国領住宅の「一団地の住宅施設」の「地区整備計画」への移行の都市計画決定後、分譲団地型ニュータウンでは、他の行政においても積極的に移行する姿勢が見える,しかしながら、基準法86条の問題については、「土地所有者が異なる場合の一体的管理」や「戸建住宅
と集合住宅との共存」等、未だ解決しなければならない問題点を抱えている。
従来の団地型ニュータウンが画一的住戸形態により、一棟に世帯も建物も街も老朽化して行く姿に対するテーゼとして、「世帯と個性がMIXされた活力のある街」とこれらの世帯と個性が共存する豊かな風景を持った街への再生が望まれる時代にきている。この為にも、これからの
特に団地型建啓の実現は、「還元面積」はこれからも依然車も重要なファクターであるが、それだけに留まらず行政・住民・民間(デベロッパー・コンサルタント)が「あるべき街の将来像」について、共有化できるイメージをどう創り上げ、如何にこれを共有化するかが大きな要素
になることを、改めて認識させられた。

■参照文献または参考文献
・「まちづくりの科学」(編著 佐藤滋)鹿島出版会