民間主導による分譲型団地建替事業の考案論文

民間主導による分譲型団地建替事業の考案
〜 街づくりの発想に基づく国領住宅事業の地区整備計画及び基準法86 条の活用 〜
 

1. 論文要旨
国領住宅(調布市、新宿15km 圏)は、昭和38 年都市計画決定に基づく「一団地の住宅施設」として、当時日本住宅公団より分譲(7 棟、144 戸)された団地である。高度成長期、ニュータウンの建設を都市計画事業として位置付け、持ち家政策と併せて、公団・公社等が住宅供給を行なっていた。「一団地の住宅施設」としての分譲型団地(昭和24 年〜昭和38 年)は、東京都だけで43 ヶ所(28,700 戸)存在する。
  これまで、公団・公社による賃貸型については、再開発事業と併せて、UR(都市機構)において、地区計画に移行する形で建替を行なった事例(公団芦花公園団地建替事業)があるが、「一団地の住宅施設」としての分譲型団地(地権者144 世帯)において、民間主導による建替事業は、今回の「国領住宅」が初めてである。

今回建替事業の大きな特徴は、
@ 建替計画が、住民の投票により、街づくり発想を踏まえた案に決定され、住民参加に基づき修正されたこと。
A これにより、民間主導のため行政においても先例のない地区整備への移行について、積極的支援が得られない状況下で、対行政との折衝・協議が、住民代表を踏まえて、粘り強く行なわれてきたこと。
B 又、これまで都市計画と基準法が実務的には分断されてきたが、ハーモニカ型団地を供給されるために創設された基準法86 条が、街づくりの発想に基づく今回の建替計画案にも活用されたこと。
である。

国領住宅の立地


都市計画法第11条「一団地の住宅施設」の範囲



2. 目次構成とその概要
 
@ 住民参加による建替計画案
平成12 年、建替事業のパートナー選定には、最終的に2 社の建替計画案について住民全員による投票が行なわれ、街づくりの発想に基づいた今回の建替計画案に決定された(他の1 社は高層板状型)。これにより、住民全体に共通した街づくり(建替)のイメージが出来上がったこと。
その後、計画案について、アンケート、ワークショップ的意見交換、説明会を経て、建替計画の修正がなされ現在の案に至っているが、これらの経過により、自分達の計画案を実現するというパワーに変わったことを明らかにする。

A 住民参加型の地区整備計画の策定
a) 前例がない民間主導による分譲型「一団地の住宅施設」の地区整備への移行について、行政の積極的支援が得られない状況で、住民パワーによる行政に対する働きかけ(市長への要望書、住民代表による陳情等)が地区整備の大きな推進力となったことを明らかにする。

 





b) 又、地区計画の制度趣旨が住民参加による街づくりの手法であっても、これまで行政主催による説明会は形式的なものであったが、国領住宅の地区整備計画案については、住民代表と行政担当、更に民間デベ(コンサル含む)が具体的な協議を何度となく行い、地区施設(公園等)のあり方、形状、大きさ、壁面後退の位置、建物の高さ、容積等を決めていったことを明らかにする。











B 地区整備計画と基準法86 条「一団地認定制度」
地区整備計画を実現する最終的な認可は建築基準法であるが、これまで都市計画と基準法は行政の縦割りの中で、別個独立のものであった。特に、ハーモニカ型の団地を想定した基準法86 条は、今回のような一建物配棟計画を想定していなかったため、基準法単体で考えれば相当困難なものであったが、本来街づくりの発想に基づく基準法86 条を今回住民参加型の地区整備
計画(建替計画含む)の趣旨を尊重した、解釈論的解決を展開したことを明らかにする。




3.結論・所見
今回の建替事業は、あるべき街の再生とは、という観点から、活かすもの・残すもの・更新するものを整理しながら策定した建替計画が出発点となっている。住民投票によるこの建替計画の決定から、着工まで6 年の歳月を要したが、この間、この建替推進のパワーが衰えることがなかったのは、建替計画を住民全体・民間デベが共有し、これを実現するという粘り強い意思が根底にあったからに他ならない。0分譲型「一団地の住宅施設」は、既に建替時期が到来している大規模団地をまだ多く残しており、その団地特有の課題も見受けられる(例 戸建と集合住宅の複合等)。その事業実現には、行政・住民・民間があるべき再生に対して共有したイメージが持てるか否かが大きな要素になることを、改めて認識された。