都市空間を多彩に創造する
屋上緑化&壁面緑化/講談社

テーマが異なる5つの庭園をブリッジでつなぐ


バードガーデンの全景。鳥の目から見える庭園シーン。

  1934年に完成した同潤会江戸川アパートメントは中庭を取り囲むように建物が配置され、この中庭が江戸川アパートの大きな特徴となっていた。
建築的な規則等で、従来の中庭機能を地上部に作り出すことは困難なため、屋上スペースに空間庭園を創出、中庭空間が担っていたコミュニティ機能の場とした。
  テーマが異なる5つのエリアをブリッジでつないだ回遊形の庭園とし、地上部とは一味違う参加形のしつらいとした。住民と緑のふれあいの場であり、五感で体感できる癒し空間、そして子供たちの原風景としての庭園要素にも配慮した計画とした。
  緑化面積620uの屋上庭園の中で最大面積のナチュラルガーデンには、シンボリックなガゼボを配置し、モミジ、エゴノキなどの雑木をベースにアラカシ、ヤマモモなどの常緑樹を植栽し、木立ちで囲むことで空中庭園を意識しない森空間とした。砂利洗い出し仕上げのアプローチでつながったテラスは逆にオープンスペースとし、高中木は数本のみとして、潅木の刈り込みをベースに広がりのある明るいコミュニケーションスペースとした。
  次のバードガーデンは、鳥の水浴び場のバードバスを中心にウメモドキ、ガマズミ、ジューンベリー等の実の成る木をペースに植栽し、野鳥の飛来を促すしつらいとした。
  ハーブキッチンガーデンは、レモン、甘ナツミカン、ユズの柑橘類の果樹と、ローズマリー、タイム、チャイブ、カモミール、ラベンダー等のハーブ類、さらにトマト、ストロベリーなどの野菜類が植栽できるスペースを方形でデザイン。タイルの飛び石がアプローチとメンテナンスの足場を兼ねる手法とした。
  ローズガーデンはモダンローズを中心に植栽し、景観を演出する花木は、ヤマボウシ、エゴノキ、サルスベリ白花、白ワビスケ等、白花で統一することでバラの花色との調和を図った。
南棟7F中央部に位置するドッグウッドガーデンは、2本のハナミズキの間にテラスを設け、ほかの4つの庭園とは異なったシンメトリーのデザインとした。庭園南側にはバーゴラを設置しフジを植栽、その中央に貫けた窓状の広がりから都市空間が一望できる仕掛けとした。

ナチュラルガーデン、バードガーデンおよびハーブガーデン、ローズガーデンをつなぐブリッジには、モッコウバラおよびツルバラを植栽することで、数年後には通路としても機能に緑の回廊として、空中庭園の醍醐味をプラスする演出とした。
  植栽された2m以上の中高木類は
全て地下支柱とし、地上部に支柱材が見えないことで空間庭園がより自然な景観となる仕様とした。
 植栽客土層は平均35cmとし、人工軽量土壌を使用したビルマテルのシステムを採用した。潅水は自動潅水装置を設置し、不足スペースは管理者の手潅水によってカバーする手法とした。 
  庭園階下は住居となっているため、アプローチおよびテラススペースは防音処理後、石貼り、タイル貼り当の仕上げとし、集合住宅において問題となる防音対策を処理した。
  この参加形の庭園は、人々が参加して始めて庭園としての機能を発揮するデザインになっており、住民が積極的に参加し、利用することで庭園が美しく維持され、緑を核としたコミュニティの場として有意義な空間になるものと思われる。






























ソフト・ハード面での維持管理




  現在(2005年8月時点)において、入居者の引っ越し状況は60%程度である(2005年6月で全住戸引渡し済)、本来の運営に向けての準備段階である。
  この規模の屋上庭園を運営するには、管理者入居者との協議を重ね新たな既約をつくり上げていくことが必要と思われる。
安全面や衛生面の向上と同時に、規則に縛らすぎてコミュニティ空間としての機能が損なわないようなソフトづくりが重要となるだろう。



将来的には住民参加型の維持管理も視野に

  江戸川アパートメントの管理組合との調整が取れていないため、今後多少の変更はあるものと思われるが、基本的な庭園管理の方向性を記す。
  高木類(アラカシ、ヤマモモ、モミジ、エゴノキ、ヤマボウシ等)は、屋上庭園であることから風対策として樹高を2.5m〜3.0mいないで維持するため、年1回の剪定において調整する。
低木および潅木、下草類は基本的には開花後の手入とし、バラ等の特殊植物は適宜に年数回の作業とする。
  消毒作業は病虫害の発生時期に合わせて年3回の作業とする。日々の庭園維持管理の基本となる除草清掃作業は建物の清掃管理者の手により、そのシステムに取り混むことで作業の効率を上げ費用の軽減を図る。給水管理は自動潅水設備によりほぼ全体がカバーされるが、植物の状態に合わせて不足分は手潅水とする。
  江戸川アパートメントの屋上庭園は緑を核としたコミュニティの形成を促すことが目的の一つであり、将来的には良好なコミュニティ形成のためにも住民が参加し、自ら管理することも検討が必要だと思われる。
  特にハーブキッチンガーデンにおいては日々の手入れがあってはじめて成り立つ庭園といえるため、住民の方々の早急な参加が望まれる。