『同潤会江戸川アパートメント建替計画』〜設計主旨〜

2014.03

●アトラス江戸川アパートメントは、(同潤会)江戸川アパートメント(昭和9年竣工、以下江戸川APと言う。)の建替計画として計画された。江戸川APは、同潤会の集大成として都市居住の理想型を追求した東洋一のアパートメントとして建築史的にも都市計画的にも大きな意義を持つ集合住宅であった。
 この集合住宅の建替計画の歴史は、東京オリンピック(昭和39から始まっていたと言われているが、種々の挫折を繰り返し、旭化成ホームズ鰍ェパートナーとして選定されたのは、平成13年であり、既に江戸川APは築70年を経過していた。当初の半年間は、敷地の範囲・保存問題・総合設計等の課題の整理であったが、これが整理されてからの設計は大きくは2つの観点からの格闘であった。

   

● 1つは基準法と容積消化である。建替えの合意形成上還元床UPのために容積率を最大限消化する必要があるが日影・高度規制を持ったこの敷地に、基準法「ナリ」で容積率を最大限確保するとすれば、凹型を北側に向けて階段状にした形態になってしまうが、それは単なる箱型マンションである。今回の配棟や形態で意図したのは、都市居住という多様な個の集積を持ちながら、集合体としての景観である。建物は6棟によって構成されているが、全体を雁行と言う形式で表現したのもこの意図に基づく。また、これにより平面的では高密でも住戸のズレによる「抜け」の空間を確保することができ、更に各住棟間の「離隔空間」も「シークエンス」としての空間に転換させた。


 

●もう1つの格闘した点は、江戸川APと正面から向き合う事であった。「江戸川アパートメントの建替とは」を熟読し、改めて「都市居住とは」「集合住宅とは」「コミュニティーとは」を我々に問い直させた。
 江戸川APがそうであったように、今回の建替計画もこの集合住宅独自の風景の創出を試みた。
 縄目模様のせっ器質三丁掛タイルの外壁、翼のようなキャノピーと大谷石の柱、借景を北側の光と共に差し込むコリドー空間、花梨材の壁と玄昌石の床・木質の天井で構成されたエントランスホールとそれに続くピロティー空間、そして路地空間へ繋がるシークエンス。これらは、建物、庭、アプローチ(路地)の一体化的な風景の試みでもあった。


 住戸形式においても江戸川APの住戸(260)が、独身部と家族部にわかれ家族部だけでも30タイプ(和・洋)程創られたが、今回の建替計画も20u〜100uまで57タイプを設け、更にその中には階高3.8mSOHOタイプやスキップ型の戸建形式を創り出している。

●また、今回の建替計画は建築家を含む地権者の方々のコラボレートも行われ、江戸川APがそうであったように「風の道」や「つなぎ空間としての屋上」はこの結果生まれたものである。

更に共用施設においても江戸川APと同様に、事業主の理解により新たな住民も加わったコミュニティーを育む共用施設として社交室・ラウンジ・アトリエ等を創り出している。

そして最後に(同潤会)江戸川アパートメントの保存については種々の事情で叶わなかったが、アールデコ調の面格子・ステンドグラス・造作家具を共用施設に活用し、学会が実測した資料を基に、「10階段」も部分的ではあるがアトリエにて再現し、(同潤会)江戸川アパートメントの記憶の手掛かりとした。


以上