『鴨江集合住宅計画』
2016.2.8

「ル・シェモア鴨江」は、浜松駅から北西1.5q圏に位置し、西側道路対岸にある「鴨江寺」は、奈良時代に創建された通称鴨江観音(お鴨江さん)として市民に親しまれ、境内には仁王門・弁天堂・成田山不動堂・鐘撞堂・観音堂等が存在し、お彼岸や大晦日、初詣には参拝客で賑わうお寺である。
又、周辺は市内でも高台にあり、300余り宿坊が建ち並んでいた歴史を持つため、門前としての風情を醸す街並みが感じられる。

 
●高台の環境を持つ計画地は、道路から更に5m程高く、1.5q圏先にある浜松駅周辺・市街地周辺が見晴らせる恵まれたロケーションにあり、希少性の高いプロジェクトであった。

●このような立地に、敷地面積3,693u・計画戸数85戸・8階建のファミリータイプの分譲マンションの コンセプトは、「邸宅性」の訴求であった。「鴨江」というブランドに住む事に相応した上質な空間の提供を試みた“アプローチ・風除室” “エントランスラウンジ” “” “外観デザイン”を、コストが厳しい状況の中で丹念に計画を行った(詳細後述)。
 
住棟は、南東向、南西向のL字配棟とし、住戸は道路より5m程高い地盤面から構成(一部住戸除く)し、エントランスは道路面に置いた。
外観計画に重厚さを求め、又、室内空間を広く感じさせるため躯体柱を室外に出し、アウトフレーム逆梁工法とし、開口部にはハイサッシュ(約2.3m)を採用し、開放感に満ちた高台の眺望が日々の暮らしの中で享受出来る空間形成を目指した。


 
アプローチ・ファサード 
西側道路面からのアプローチ・ファサード計画は、道路に勾配がある為、駐車場(消防活動空地含む)の確保と併せて検討を重ねた。
一般的なアプローチ・ファサード部分は、専用面積を確保するため、住戸1スパン分位しか取れないのに対し、今回の土地は高低差があり、西側道路の地盤面には住戸を配置せず、アプローチ・ファサードに住戸4スパン分(約28m)を当てた。
デザインも、この広いスパン(水平ライン)を強調するため、小庇(夜間はライン照明)を廻し、更に擁壁から1m程後退させたところにファサードの壁面を置く事で地中の一部をくり抜いた構築物としての表現とした。

 

風除室からエントランスホール、ラウンジ
両脇に山ボウシの植栽を施したアプローチから入る風除室は、縦格子と坪庭(景石・白砂・黒那智)で構成、「邸宅」としての前庭的要素を持たせた。
帰宅した人々を迎え入れる設えを丹念に創り込み、風除室を、住まいというプライベートな空間への意識に切り替えるプロセスと位置付けた。

エントランスホール(ラウンジ)は、「邸宅性」の視点からは「応接間」であり、禅宗の寺院建築では「方丈の間」に当たる。そこに不可欠な要素は、庭の景色と品を持たせた室内空間となる。
室内空間は、鴨江という場所性を踏まえ、日本の伝統的な要素を取り入れた。
全体として木質を基調に壁や天井を構成し、コンシェルジュの受付カウンターも、木質系の色調に左官仕上げの下地と縦格子の間に照明を仕込んだ。エントランスラウンジは、客をもてなす空間として、修景としての庭と、これを眺める応接間として、落ち着きと品格を持った構成を試みた。そのため、下座となる壁は、障子を通して柔らかな光りが漏れるライティングウォールとした。
 
庭の設えは、正面に鴨江幼稚園の建物が迫っているため、遠近感を持たせる事と、ラウンジから四季折々の季節感、庭園としての静謐さが感じられる“”を目指した。
2段の野面の石積みによって遠近感を持たせ、これを中心に、イロハ紅葉を主体にソヨゴ、白梅、アセビ、ダンコウバイの植栽と手水鉢で構成した。
外観計画
鴨江集合住宅の外観計画に当たっては、歴史的要素の残る街並み(落ち着き)を意識しながら、邸宅性として品格のある表情を試みた。
全体の色調は、少し赤味のあるアース系の色調を基本とし、逆梁の腰壁は笠木・縦リブ・石目吹付け・楣と様式的な構成ででデザインを行い、柱と腰壁を分節することで表情を豊かにした。
更に、頂部への見切りとしてのボーダー(水平ライン)・柱やコーニス等の頂部は様式性を取り入れたデザインにより、集合住宅全体に格調を持たせることを意図した。
コストにより45二丁掛磁器質タイルも、接着張り(目地材無し)によって思わぬ深みのある表情の効果が生まれた。
最後に
コスト環境や工期が厳しく、素材等VE・CDを重ねながらも鴨江というブランドに相応しい邸宅感を何とか保てる形でまとめられる事が出来たという阜サが最も近いかもしれない。
施工に携わった所長・職人の皆様方に、改めて感謝を申し上げる次第です。
(劾EXT ARCHITECT&ASSOCIATES 代表 山中 猛)
以上